技術開発本部
技術部
電線技術課

お客様の期待に応える製品とは

私たちはお客様の声に押される形で、
EM-LMFCに必須と考えていたセパレータをなくす「セパレス化」プロジェクトを結成し、

被覆材料の改良、製造方法の最適化を模索した。

なぜ再開発が必要だったのですか。

EM-LMFCは曲げやすいことが最大の特長で、施工現場でも布設時の取り回しの良さが好評でした。

しかし、やわらかい被覆材は被覆工程で狭い隙間にも流れ込むので、素線と被覆を分離しておく必要がありました。今にして思えば、柔らかい電線なのだから分離用のセパレータ採用はやむを得ないという技術的な甘えがあったと思います。

お客様からセパレータの除去が煩わしいという声を聞いて、製品のレベルアップの必要性を痛感しました。

再開発は、材料の開発に2年、セパレス化を製品化するまでさらに1年かかりました。

なぜそんなに時間がかかるのですか。

まずはセパレータが担っていた役割を不要にするため、新たな被覆材料の開発から取り組みました。しかし同じ組成でも製造条件によって性能は変わるため、さまざまな条件で試作して評価し、そのデータを元に次の試作の方向性を探るということを繰り返します。組み合わせは莫大な数になるため、いかに効率的に着地点を突き止めるかが重要です。試作の評価データと想像力で進めるのですが、機械的特性だけでなく、耐久性や外観も維持しなくてはならないし、コストも見据える必要がありました。

ようやく成功したと思って最終形態にしたところ、被覆表面の印字が消えやすいなど新たな課題が見つかったりして、インクや印字条件の最適化にも取り組みました。

セパレス化を実現して思うことは何ですか。

模索段階の苦労を思うと、感慨深いものがあります。方向性が見え始めても、新たな課題が浮上してきたりするので着地するまで気が抜けませんでしたが、できあがった製品は副産物としてさらに柔らかくなり、満足できるものに仕上がりました。 お客様の声で製品が進化して喜んでいただくのを目の当たりにできるのは、開発者の醍醐味ですね。